戸恒浩人さんインタビュー風景01

ー  東京スカイツリーをバッグに。「初めてライトが灯された時の感動は今でも忘れません」と戸恒さん。

東京スカイツリーの外観照明をデザインし、日本だけでなく世界を舞台に活躍する戸恒さんのタクシーライフとは…。

「 大学時代に切り開いた照明デザイナーの道 」

Q.「照明デザイナー」とは、どのようなお仕事なんですか?

対象は幅広くて、「光る」ものだったら何でも作る仕事です。
一番イメージしてもらいやすいのは建物のライトアップですね。その他にも、建物を作る時の空間作りに、私たち照明デザイナーは活躍します。
ホテルや結婚式場など、コンセプトに合わせて、照明で空間を演出します。
キレイ、ステキ、気持ちいいなど、人の感情にプラスになる作用を照明デザインで生み出すということしています。
最近は、大きな庭園のライトアップや、一般住宅の照明デザインも増えています。
建築家に近い知識と、照明に対するデザインの知識の両方必要になってきます。

Q.照明デザイナーになろうと思ったきっかけは?

幼い頃から「職人になりたい」と漠然と思っていました。ただ、何の職人になりたいか決まらないまま大学の理系学部に入学しました。
学科を選ぶ際に3つ興味のある分野があったんですが、ロケットを作る「宇宙工学」は物理学が主になるのでパソコンに向かいっぱなし。遺伝子の研究をする「生物化学」はずっと研究室にこもりっぱなし。勝手にそうイメージしていたので、もっと日常の中で仕事をしたいなと思ったんです。
そこで残ったのが「建築」でした。建築学を選択して、勉強をする中で、模型を作ったりするんですけど、模型のスキマに光が入って、それがとてもキレイに見えたんです。空間の形を作るより、そういった光の効果の方に興味を持ちました。そういう仕事はないのかな?と探したところ、照明デザインにたどり着き、当時、まだ日本に数社しかなかった照明デザインの会社でアルバイトをしたのがきっかけです。
だから、もし、若い人が迷っていたら、私は言ってあげたいんです。「無理に決める必要はないですよ!」と(笑)

「 インスピレーションは全て日常から生まれる 」

Q.デザインのヒントは、何を参考にされるのでしょうか?

日常生活で起きる何気ない現象です。キレイだなと思ったことをどんどん自分の中に蓄積していきます。
例えば、たまたま見た葉っぱがゆらゆらする感じだとか、不意に見上げた空に浮かぶ雲、雨上がりにひょっこり現れた虹などです。
そう言った時に感じたプラスのイメージ、ポジティブなイメージをデザインに落とし込みます。
私のデザインのほとんどは自然のものからインスピレーションを得ています。

戸恒浩人さんインタビュー風景02

ー  人の感情にプラスになる照明をデザインするため、日常で出会った小さな感動を日々蓄積しているそう。

Q.戸恒さんの代表的な作品に東京スカイツリーがありますが、
デザインしてから形になるまでは、どれくらいの期間がかかったのですか?

デザイン自体は、どの作品も長くて3時間です。3時間以上かけてまとまらないものは、うまくいかないことが多いんですよ。もちろん、事前準備はします。
東京スカイツリーの場合は、墨田という立地を大切に…という条件がありましたので、墨田の歴史を調べました。歴史を踏まえた上で、どう表現するか?それを考えるのは3時間です。そこからデザインを図面に落とし込んで、CGを使ってどういう光が出るのかを計算したり、予算が合うのかどうかを調整をしたり、照明器具を設置したり…と完成するまで5年の月日がかかりました。

「 海外に比べれば、日本のタクシーはリムジンです 」

Q.海外と日本を行き来する生活をしていると伺いました。
行ったり来たりの生活の中で、タクシーはどのように利用されていますか?

東京オリンピックの後のことを考えると、海外まで仕事を広げたいと考えて香港にもオフィスを構えました。
今は、月の半分を香港で過ごしています。香港を走る車の半分以上はタクシーなんです。日本よりも安い料金なので、香港の人はタクシーをよく利用していますし、私もよく利用します。ただし、香港の乗務員さんは「乗せてやってる」という感覚なんです。「◯◯まで行ってください」と言っても断られることもありますし、トランクを開けて荷物をのせてくれる乗務員さんはほとんどいません。運転も荒いので、捕まっていないと振り回されてしまいます。
日本のタクシーは至れり尽くせりですから、私は日本のタクシーはリムジンだと思っています。

戸恒浩人さんインタビュー風景03

ー  デビューしてまもない次世代タクシー車両「JPN TAXI」と。

Q.そのリムジンのような日本のタクシー、車内ではどのように過ごしていますか?

日本では、夜中に乗ることが多いんです。というのも、東京スカイツリーのイベントの照明を手がけることが多いのですが、テストをするのが夜中から明け方にかけてなんです。テストが終了する頃、東京の街は、すでに寝静まっているんですが、東京スカイツリーから自宅まで、夜の東京をタクシーの車窓から眺めるのが好きですね。特に、首都高は劇的に景色が変化するので、何度見ても飽きません。夜中の工事現場のカラーコーンを見るのも楽しいです。

戸恒浩人さん

戸恒浩人
照明デザイナー シリウスライティングオフィス代表
1975年、東京都出身。
東京大学工学部建築学科卒業後、照明デザイナーの道へ。
浜離宮恩賜庭園のライトアップや、ホテル日航東京チャベル、日本経済新聞東京本社ビルなど、ホテルやオフィスビル、商業施設の照明を手がける。
2007年、東京スカイツリーのライティングデザイナーに選出。
現在は香港にもオフィスを構え、東京・香港を行き来する生活を送っている。

文:ほし友実 写真:鈴木千佳