「文字焼」をご存知でしょうか?現代の一般的な「もんじゃ焼」が具だくさんなのに対し、古来の文字焼はいたってシンプル。元々は水で溶いた小麦粉を、絵や文字を描きながら焼くおやつで、屋台や駄菓子屋で作られていたものです。今や見かけることが少なくなった「文字焼屋」の看板を祖父母から受け継ぎ、鉄板と共に全国を行脚する、川田文字焼店店主・川田直樹さん。全国各地、イベントに引っ張りだこの川田さんの活動と、タクシーの使い方について伺いました。

川田文字焼店 おばあさまの川田きよ子さんと直樹さん
おばあさまの川田きよ子さんと直樹さん

日常の風景だった、おばあちゃんの文字焼屋

–「文字焼」と川田さんの思い出は?

祖父母が栃木県足利市で文字焼屋兼卓球場を営んでいたんです。元々営んでいたお好み焼屋から、文字焼屋に方向転換し、その時に卓球場も作ったと聞いています。昭和42年オープン、創業56年目になります。祖父が亡くなった後は祖母が1人で店を切り盛りしてきました。子どもの頃は、週末やイベントの度に友達を連れて店に寄るのが日課。いつも近所の人がいて「店」というより、ただ祖母の家にみんなが集まっている感じ。お客さんや友達が厨房に入り、自分でどんぶりを運んでいたのを覚えています(笑)。

川田文字焼店 おばあさまが営んでいた卓球場

–子どもの頃からお店を継ぎたいと考えていたのですか?

子どもの頃は特に継ぐ気もありませんでした。祖父母には自分の父を含め3人の子供がいて「ゆくゆくは鉄板を1枚づつ渡す」なんて話を聞いたりもして。子供ながらに「皆が要らないなら俺が欲しい」と言っていたのを覚えています。高校に進学する頃には、友達と祖母のお店に通うことも少なくなっていきました。店は失くなって欲しくはないと漠然と思っていましたが、勿論いきなり継ぐなんてことはせず、大学に進学し一般企業に就職をしました。祖母や父も最初は反対していたんです。文字焼の商売の難しさを分かっているからこそだと思います。

–継いでみて難しかったことはありますか?

活動を始めるタイミングで判明したのですが、まず祖父母のお店は店名がありませんでした。レシピも捨ててしまっていて曖昧で。醤油、ソース、地元の天ぷら屋さんから頂く天かす、他調味料、隠し味、分量、どれもこだわりで溢れているのですが、祖父母の記憶の中にしかレシピがありませんでした。その味を再現できたのは、祖母と父の味覚と記憶のおかげです。祖父母の文字焼は、ソース味、醤油味、ミックス味の3種だったんですが、ソースと醤油しか再現できていません。食べる時は「こってり(ソース)→さっぱり(醤油)」をおすすめしてます。昔からその方が祖母の醤油味の美味しさがよく分かるんです。

鉄板ごと旅する「文字焼店」

–今はイベント出張がメインだと伺いました。

現在は実店舗は持たず、鉄板ごと出張・文字焼店をしています。東京だけでなく、他の都道府県へも行きます。活動の途中でクラフトビールにハマってしまい、主に全国のブルワリーさんか、ビアバーなどにお邪魔させて頂いています。文字焼とクラフトビールはすごく相性が良くて。文字焼は具が少なくちびちび食べられるので、お腹が膨れる前に多種多様なスタイルがあるクラフトビールを飲み比べすることが出来ます。自分よりもクラフトビールに詳しいお客様に「この味にはあそこの◯◯が合うよ」と教えていただいたり、ブルワーさんからペアリングをおすすめしてもらったり、楽しみ方がどんどん広がっています。

–支払い方法は「投げ銭」だそうですね。

POP UPの時は基本的に投げ銭式にしています。はじめたばかりの時は1杯1,000円前後にしていたのですが、「祖母の頃は250円でやっていたな」などと、どこか胸につかえるところがありました。「お腹いっぱいだから1口でいいんだよね」と言われたり。でも活動を続けていくためにはあまりにも安価にするわけにもいかず…。そんな時、尾道で開催した時に「投げ銭にしちゃいなよ」と言われたことがきっかけで、投げ銭スタイルにしました。売上の振り幅は激しいですが、今は胸のつかえも無くなり、「祖母の味を広めること」「お邪魔するお店のビールを沢山飲んで頂くこと」を大事にしています。

–普段タクシーを利用されますか?

プライベートではあまりタクシーに乗る機会はないんですが、文字焼の活動をしている時は必ずタクシーを利用しています。地方へ行った時は特にタクシーで移動時間をできるだけ短縮して、行きたいブルワリーさんに行ったり会いたかった人に会ったり、時間を有効に使いたいので。あとはとにかく、鉄板のおかげでキャリーケースがすごく重いので(笑)。軽くても40キロ、重い時は60〜70キロはあります。いつもアプリを使ってタクシーを呼んでいるんですが、車種やタクシー会社を指定できるということを、実は知りませんでした。これからは選んでみようと思います。

後編へつづく
https://michinowa-ouendan.tokyo/taxi-life-tokyo/vol30-2/

【 川田文字焼店 】川田直樹さん

川田文字焼店 川田直樹さん

@kawadamojiyakiten

栃木県足利市、創業56年の文字焼屋(もんじゃ焼)。
祖父母の味を引き継いだ店主(孫)が、鉄板を背負って出張提供しています。今では見かける機会が少ない、江戸時代から食されていた具が少なく土手も作らない文字焼です。

※実店舗はおばあさまのご自宅かつ現在休業中のため、住所は非掲載とさせていただきます。


現在47都道府県行脚中。全国を巡りながら各地でPOP UPを開催しています。

🔥九州地方行脚スケジュール🔥

📍3月11日(火)12日(水)長崎/銅座町 @local.nagasaki

📍3月14日(金)15日(土)大分/府内町 @bistroshun

📍3月19日(水)20日(木祝)大分/佐伯 @_orangcraftbrewery

📍3月22日(土)23日(日)鹿児島 / 名山町 @hay_ashi_meizan   (@sankakubeerworks )and @shoppe_tokyo 

📍3月26日(水)27日(木)鹿児島 / 東千石町 @46.craft (@hifumiyo_brewing

📍3月30日(日)宮崎 / 山崎町 @novorubrewing

📍4月2日(水)3日(木)沖縄/壺屋 @witchs_mahowbrew (@mahowbrew


写真:長原 慎一  文:井上 望(sog株式会社)
※イベント時の写真は川田さんよりお借りしています。