ー 車内でのスマホ充電サービスなど、タクシーのサービスに十分満足と笑顔の松本さん。
都内では、必ずタクシーを利用するという松本さんの、タクシー移動の楽しみ方とは…。
「 備前焼は呼吸する器、育てる器 」
Q.陶芸家になってもうすぐ10年という松本さん。やはり一番最初に作った作品というのは、覚えているものでしょうか。
実は、陶芸教室ではじめて作ったのは陶器の判子。その判子を今でもサインとして使っているんです。
かおるの「K」という文字を入れたのですが「π」にも見えると言われて。
「π」は無限に続く円周率を表す記号でもありますし、そういった意味も込められるので、とても気に入っています。
ー 松本さんの実際のサイン「π」にも見える「K」。
Q.陶芸家になってから、苦しかったことはなかったですか?
好きなことをやっているので、苦しいということはありませんが、大変だったことはあります。
あるプロジェクトで、デザイナーさんが描いた図面を元に器を作る企画がありました。
図面を見て作品を作るという経験が初めてだったので、すごく難しかったですね。
出来上がった作品はとても評判が良かったので、デザイナーさんにお断りを入れて、今でもその作品は作っているんです。
Q.備前焼のどのようなところに魅力を感じていますか?
わたしはもともと、きらびやかな器よりも、プリミティブな器に魅力を感じるタイプだったんです。
釉薬を使わない焼締めは、籾殻や炭などを使って色をつけていくのですが、同じ色に仕上がることが二度とないので、焼き上がりがすごく楽しみなんです。
作り手側としては、そんなところも魅力ですし、使う側としてもさまざまな魅力がたくさんあります。
釉薬でコーディングしないので、土の細かな気孔で呼吸していますから、ビールを注げば発泡効果が高まって、泡が細やかになったり、日本酒を注げば、まろやかな口当たりに変化します。
お花を活ければ長持ちしますし、塩壺は、塩が固まらないといった効果も。
そして、使えば使うほど、馴染んできます。
焼き上がりは、ざらっとしているんですが、使っていくうちに、しっとりつるつるとした質感になり、色も深みが増してきます。革製品に近い感じでしょうか。使い込むほど愛着がわいてきますよ。
ー 作るのが大変だったという黒いスープ皿。松本さんの作品の中でも人気がある器のひとつ。
「 都会のタクシー移動で受ける刺激で高まる創作意欲! 」
Q.都内では必ずタクシー移動をするという松本さん。タクシーを利用するうえで、楽しみがあるそうですね?
最近のドライバーさんは、「どのルートで行きますか?」と聞いてくださる方が多いのですが、わたしはあえてお任せしています。
「こんな道あるんだ〜」という発見も多く、お任せルートに毎回ワクワクするんです。
東京って街の変化が激しいですよね。ずっと窓の外を眺めて、新しくオープンしたお店をチェックしたり、人間観察をしながら、十分な刺激をもらっています。
そういった刺激があるからこそ、輪島で海や緑に囲まれながら、器の制作に集中できると思うんです。
今、せっかく輪島で暮らしているので、輪島塗りと備前焼を融合した新しい器の制作を考えています。
漆塗りの職人さんと話し合いながら、話を進めているところです。11月の個展で発表したいなと考えています。
松本かおる
1972年東京都生まれ
レストラン運営会社の広報を経て、30代半ばで陶芸家に転身。
石川県輪島市に暮らしながら、都内で陶芸教室を開いている。
毎年11月には東京・恵比寿で個展を開催。
陶芸教室や個展の詳細はhttp://matsumotokaoru.comをチェック!
文:ほし友実 写真:鈴木千佳