日本だけでなく中国でも活躍する建築家 三村さんのタクシーライフとは…。

「　“建築の中にストーリーを作る”
それが三村さんのポリシー　」

Q．デザイン性を重視した建築が評判の三村さん。最近は、どのような作品を手がけましたか？

とくにデザイン性を重視した作品というと、美容室と音楽スタジオです。
ニューオープンする美容室を手がけたのですが、「ロンドンやニューヨークにあるような、５０〜６０年代から使い込まれたヴィンテージ感のある空間」「鏡のレイアウトにこだわりたい」という大きく２つのテーマがありました。
オーナーさんと物件探しから始めて、家具も一緒に選びました。ヴィンテージ感を出すために、新品の家具も意図的にこすって汚したりもしましたね。

音楽スタジオは、あるミュージシャンのプライベートスタジオなのですが、こちらは「スタジオでありながら居心地のよい別荘のような空間にしたい」とオーダーがあったので、木をふんだんに使いました。
防音スタジオは他の部屋と隣接しない広い独立した天井高の空間がベストなので、こちらも物件選びからスタートしました。家具もカーペットも、全てオーナーさんと一緒に選びました。

工場だった建物を音楽スタジオにリノベーション。
自然素材をふんだんに使い、リラックスできる温かな空間に仕上がった。

Q．建築を作るにあたり、一番大切にしていることは何ですか？

「建築の中にストーリーを作ること」です。
住む人や、建物のオーナーさんが、「ここはこういう意図があって、こうなっているんですよ。面白いでしょ！素敵でしょ！」と話したくなるような要素を入れ込むことです。
ですから、オーナーさんが「予算がこれしかないんだけど、これだけはどうしても作りたい！」などという熱い思いがあると、それ自体がストーリーになり得るので、建築家として燃えますね。

Q．職業柄、さまざまな建造物にご興味があると思うのですが、三村さんが東京で一番好きな建築はズバリ何でしょう？

青山にあるスパイラルビルです。
大阪の大学で建築を学んでいた２１歳の時、初めて東京に出てきました。
スパイラルは、槇文彦さんという建築家の作品なのですが、僕はずっと槇さんの作品が好きで、東京に行くなら、絶対に実物のを見たかったんです。
初めて見た時は、そりゃもう感銘を受けましたね。外の道路と繋がっているかのような、ベンチのある通路や螺旋状のスロープがありますが、あのような空間に至ったのは、槇さんの意図があってこそだと思うんです。
自分もいつかこんな建築が作れたらいいなと思いました。
ひと通り建築を楽しんだあとに、スパイラルビルの中にあるカフェに入ったのですが、コーヒー一杯１０００円したんです。
当時は学生でしたから、その高さにびっくりしました。
ですから好きというか、いろいろな思い出が詰まった建築といったほうがいいかもしれません。

「　タクシーは人だけでなく、
プライベートな空間も運んでくれる　」

Q．５年前から、中国の商業施設のコンサルティングもしている三村さん。中国ではタクシーはよく利用されますか？

日本ほど私鉄が発達していない中国では、タクシーが主要な交通手段のひとつになっています。
初乗り料金も安いんですよ。日本円にすると1５０〜17０円といったところでしょうか。
ドライバーさんは、スマートホンを愛用していて、ナビとして使用したり、決済もスマホで行っています。
中国の人は流しのタクシーを止めるよりもアプリの配車サービスを利用している方が多いですね。日本よりもタクシーのIT化が進んでいる印象はあります。
また、日本人を含む外国人は後部座席に座りますが、中国の人は、一人でタクシーに乗る際は助手席に座るんですよ。

三村さんにとって、仕事の移動にかかせないタクシー。
郊外に行くことも多いため、配車サービスも利用している。

Q．日本では、どのようにタクシーを利用されていますか？

仕事の際は、必ずタクシーを利用しています。
理由は２つあります。１つは、模型や、壁紙・床材などのサンプルなど、打ち合わせの際の資料が大荷物なので、公共交通機関での移動が難しいということ。
もう１つは、交通機関がないエリアでの打ち合わせも多いことです。あたらしく建設される大型商業施設など、郊外が現場になることも多いので、配車サービスもよく利用しています。

Q．タクシーでの時間はどのように過ごしていますか？

打ち合わせに行く時は、その予習を。帰りはボーッとすることがほとんどです。
タクシーって、ただ人を運ぶものではなく、その人のプライベートな空間も運んでくれるものだと思うんです。
ですから、タクシーの中は、心地よい空間であってほしい。
最近増えたジャパンタクシーは天井が高くゆったりとできて、とてもいいですね。

文：ほし友実　写真：鈴木千佳