ウェディングの司会、ビジネスマナー講師、企業顧問などのキャリアを経て、現在はライフスタイリストとして活動する北條久美子さん。自身の経験をもとに、「自分らしく豊かに生きる」ための提案や場づくりを行っています。そんな北條さんのタクシーライフとは。

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「 それぞれの仕事でつなぐ、笑顔の連鎖 」

Q.ライフスタイリストの観点で、タクシーを「暮らし」に役立てるアイディアがあれば教えてください。

ただ移動する手段としてだけではなく、タクシーに乗ることで、「◯◯な時間」をつくり出すことができると思うんです。私の場合だと「気持ちの切り替えの時間」であったり、ワークショップやセミナーに向けての「準備の時間」であったり。流れる景色を見ながらぼーっと過ごしたいのであれば、乗務員さんに一言「静かに過ごしたい」と断っておけばいいし、逆にちょっとした雑談で心をほぐしたいときは、「あったかくなってきましたね」などと、話しかけてみてもいい。タクシーという個室の空間だからこそできる時間の使い方を楽しんでみてはいかがでしょうか。

Q.タクシーをひとつの「空間」としてとらえればいいんですね。

そうすれば、もっと気軽に日常でタクシーを使えるようになりますよね。
乗車している時間を気持ちの「セット」にも「リセット」にも使えるよう、基本的には茶室のようなさっぱりとした空間が理想ですが、音楽を選べたり、おしぼりを購入できたりするオプションサービスとかがあると、さらに最高だなぁと思うんです。
私が主催するライフデザインの講座では「1日は1440分。そのなかの1%だけでも自分のために使いましょう」と、話したりしているんですが、移動の時間も有効活用できると素敵だなって。

Q.北條さんご自身は車内でどのように過ごしていますか。

私は、乗務員さんと話すのが好きなほうで。お店の情報を教えていただいたり、街路樹の話題になったり。この通りの桜がいちばん早く咲いて、あちらの通りは2週間後に咲くなんていう乗務員さんならではの情報を教えてもらったときには、ラッキーだなと思います。

Q.車内でのエピソードで印象に残っていることはありますか。

仕事で忙しくしているとき、ため息をついた私に「お疲れですか」と、声をかけてくれた乗務員さんがいました。諭すのではなく「忙しくするために生きているんじゃなくて、生きているから忙しいと思えるのが理想ですよね」と、いわゆる人生論としてお話してくれたその一言に、やさしさを感じ、気持ちが楽になったことがあります。
また、これから謝罪に行かなければならないというときにもタクシーを利用して、乗務員さんに「謝罪は聞くが８割ですよ。がんばって、きっと大丈夫」と、励まされたこともあります。タクシーって、自分の日常の延長線上にあるものだから、こういうドラマが起こったりするんですよね。

Q.移動の時間が快適だと、１日気分よく過ごせそうです。

タクシーの乗務員さんに丁寧に対応してもらったりすると、なおさら。しかも気分がいいと、周りの人にもやさしくなれたりするし、私自身もそういう仕事の仕方をしたいなと思っているんです。私の話を聞きに来てくれた目の前の人が笑顔になることで、その方のご家族だったり、ご友人だったり、パートナーだったりが笑顔になってくれたらいいなって。その人が、またほかの人を幸せにしていったら、最終的には世界平和につながると本気で思っているんですよ。

「 リアルにみんなが集える、
心と体がととのう場をつくっていきたい　」

Q.今後の展望を教えてください。

現在は、研修やセミナーといった「場」で、自分らしく豊かに生きるための提案を行っていますが、今後は、空間デザイナーの夫といっしょに、リアルな「場づくり」をしていきたいです。美味しいワインと食事があって、みんなが笑って過ごせるスナックが理想ですね。イメージしているのは海の家の常設版。私自身がサウナが好きなので、サウナも常設した「心と体がととのう場」をつくれたらいいなぁと。
今すぐにというわけではありませんが、タクシーと同じで、目的地を言わないと辿り着けないから、宣言はしっかりと。

Q.「自分らしく豊かに生きる」を実践する、しなやかな生き方が素敵です。

人生は旅と同じ。言語の壁など、不安に感じることがあっても行ってしまえば、案外なんとかなる。一歩踏み出すか、そのままでいるのか。それは自分次第ですよね。特に大人になると、だれも何も言ってくれないから「言われなかったらいい」では、自分の成長もそこまで。「今日の自分どうだったかな」と自分自身と会話しながら、少しずつでも前に進んでいければいいなと思っています。

写真：長原慎一 文：多田千里