日本交通の、乗務員が新卒社員のみで構成されている「葛西営業所」が2023年2月に移転リニューアル。それに伴い、営業所内に社員向けのカフェが設けられました。
カフェ導入に尽力したのは、各営業所の乗務員から立候補した有志9名。
この一員であり、キッチンスタッフも務める小川幸音さんに、カフェ設立の背景や、仕事の醍醐味について話を聞きました。
2020年 「新木場営業所」乗務員として入社
2022年10月〜「新木場営業所」乗務員 兼 キッチン検討プロジェクトメンバー
2023年2月〜 キッチンスタッフとして「葛西営業所」に勤務。
2023年6月〜 同営業所のキッチンスタッフ 兼 運行管理者に就任。
営業所内に気軽に集えるカフェをつくりたい!
Q. なぜ、タクシー営業所にカフェを?
タクシー乗務員は乗務中は基本的にひとり。だからこそ営業所での情報交換や交流は欠かせません。特に入社したばかりの経験の浅い若手乗務員にとってはなおのこと。そこで、乗務員たちが気軽に利用できる “交流の場” として、カフェを設けることになりました。
Q. 小川さんはカフェの導入に携わられたメンバーのお一人ですよね。
そうなんです。新入社員のモチベーションやスキル向上のための施策を行う部署「HRM(Human Resource Management)」から、すべての新卒社員を対象に、カフェづくりを行う「キッチン検討プロジェクト」のメンバーの募集があり、私はそれに立候補しました。
メインメニューであるパンの種類やドリンクメニューの内容、機材のセレクトなど、キッチンや調理にかかわる様々なことをいくつかのグループに分かれて検討し、2023年2月にオープンしました。
乗務員の健康維持に役立つメニューを考案
小川さんがメニュー開発をした小松菜スムージー(右)と、冷え対策におすすめのジンジャージュース(左)
Q. 「キッチン検討プロジェクト」においての小川さんの担当は?
私はドリンクメニューの開発を担当しました。自家製小松菜スムージーは私の発案です。
Q. なぜ小松菜に注目を?
葛西営業所は江戸川区にあるので、せっかくなら江戸川区の名産品である小松菜を使いたいという思いがありました。実は、小松菜には疲労回復や免疫力を高めるのに必要なカロテンやビタミンCが含まれていて、骨や歯の健康に欠かせないカルシウムは、ほうれん草の約3倍!運動不足になりがちな乗務員に必要な栄養価がたくさん含まれている食材なんです。
人と接する仕事で、自分を活かしたい
Q. そもそも、プロジェクトメンバーに立候補したのには、どういった思いがありましたか。
母が料理教室の先生をしているので、“食”に関係することで、自分に何かできることがあるかもしれないと思ったのがひとつ。それと、学生のころにファミリーレストランや居酒屋といった、飲食店での接客業のアルバイトをしていたので、今までの経験が生かせるかもしれないと思いました。タクシーの乗務員として入社したのも、接客業が大好きで、人とかかわる仕事に就きたいと思ったことがきっかけです。
Q. “乗務員=接客” と、すぐに結びつきましたか。
いいえ。学生ということもありタクシーとは縁遠い生活をしていたので、当時のタクシー乗務員に対するイメージは、いわゆる“運転する人”という感じでした。日本交通を知ったのは、就活情報サイトでした。もともと運転好きということもあり、興味本位で説明会に参加するうちに、タクシー乗務員に対する今までのイメージが少しずつ変わっていきました。最終的に “この会社でがんばってみたい” と思うようになったのは、日本交通のお客様に対する真摯な接客方針に惹かれたから。あと、タクシー乗務員は歩合制なので、頑張れば頑張るほどお給料がアップするところにも、やりがいを感じました。
Q. 実際に乗務員として働いてみて、いかがでしたか。
乗務では、様々なお客様がいらっしゃり、まさに一期一会の連続でした。お客様がご自身の半生を語られたりすることもありました。そうした方をおもてなしすることで、ただ運転するだけではない仕事だということを実感しました。
Q. 新人の乗務員ゆえに大変なことはありましたか?
私は千葉県の出身なので、乗務し始めたころは東京の道が分からず、お客様にお尋ねしたことが何度かありました。気持ちが焦って、普段は間違えない道を間違えてしまうことも。でもそんなときこそ成長のチャンス。「一度間違えてしまったことは、二度と間違えない」というプラスの経験に変えられるようになったことは、自信につながりました。
乗務経験があるからこそ、できること
Q. 乗務員と「キッチン検討プロジェクトメンバー」の兼任は、ハードではなかったですか。
「キッチン検討プロジェクト」では1か月に2回くらいの頻度でミーティングが行われ、あとは各々のグループがそれぞれの課題に対して検討するというスタイルが取られていたことにより、それほど負担に感じずにこなすことが出来ました。むしろ、ふだんは他の営業所の人たちと触れ合う機会がないので、このミーティングのおかげでたくさんの人と知り合え、交流できたことが、自分にとってプラスの経験になりました。
Q. カフェという“場づくり”で目指している、“仲間との交流” をひと足早く体験された感じですね。
そうかもしれません。同じ仕事をしているからこそ分かり合えたり、励ましあったりもできますし。今はキッチンスタッフとして料理をサーブしていますが、ただ食事を用意するだけではなく、乗務員としての経験があるからこそ、できることや気づけることがあるなと感じているんです。
Q. 小川さんのできることは、例えばどんなことがありますか。
ヘトヘトな乗務員さんがいらしたら「お疲れさまです」と挨拶したり、落ち込んでいる様子だったら「何かあった?」と声をかけたり。「この時間、あまりお客様がいらっしゃらないんですけど、どのあたりを走ればいいですかね」という質問にも、元乗務員だからこそアドバイスできたりする。私にできることは、ささやかなことですが、少しでも新人乗務員たちの力になれていると嬉しいです。
どんなときも笑顔で乗務員をサポート
Q. カフェスタッフとしての喜びは?
ここを利用してくれる人たちの楽しそうな顔を見ることですね。「今日、遠くまで行けました!」とか「今まででいちばんの売上でした」といったような報告をしてくれると、自分ごとのように嬉しいです。だから私もどんなときも笑顔でキッチンに立つようにしています。これから乗務する人には「いってらっしゃい」、乗務明けの人には「お疲れさま」を笑顔で伝える。それが私の役割です。
Q. カフェの一押しメニューは?
それはやはり、栄養満点の小松菜ドリンク!ほかにも、疲労回復に効果的なクエン酸が含まれたレモンジュースや、冷え対策に効果的なジンジャージュースなど、おいしく身体にいいオリジナルドリンクが揃っています。また、キッチンで発酵から行っている焼き立てパンもおすすめ。今後は、毎日飽きずに利用していただけるように、さらにメニューを増やしたり、パンの種類を変えていきたいなと考えています。
Q. 小川さんご自身の目標や展望は?
最近、キッチンスタッフと兼務で、タクシーの安全な運行のために指導や管理を行う運行管理者の業務に携わるようになりました。今まではカフェに来てくれた乗務員に対しての接客がお仕事でしたが、これからは営業所の全乗務員に対して接することになり、やりがいはじゅうぶん。みんながイキイキと気持ちよく働けるよう、全力でサポートを行っていきたいと思っています。
- 小川 幸音
- Ogawa Yukine
- 入社年:2020年
写真:長原慎一 文:多田千里