建築家としてだけではなく、建築を教え、伝える「建築めぐり」というお仕事もされている三村さんのタクシーライフとは…。

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「　建築から歴史や世界を知ることができる“建築めぐり” 」

Q．三村さんは建築を作るだけでなく、建築を教え、伝える「建築めぐり」というお仕事もされていますが、建築めぐりを始めた経緯を教えてください。

建築好きの友人に「この建物はどうしてこういうカタチをしているんだ？」とか「この家具は誰のデザインなのか？」など、建物のことやインテリアのことをよく聞かれるので、そのたびに、質問に対しての答えだけではなく、そのバックグラウンドやトリビアなど、自分の持っている知識もフル動員で伝えたんです。
そんなことをしていたら、友人から「他にも建築のことを聞きたい・知りたい人がたくさんいるはずだから教室を開いたらどう？」と冗談半分に言われました。
そんな時に旅行代理店を営む別の友人から、国内で新しいツアーを始めたいんだけど、「建築めぐり」なんてどうかな？と相談されました。それが今のようなカタチとなりました。
通常のツアーは２０名ほどの定員なのですが、参加者の８割以上が通訳案内士の方です。外国人観光客から建築の知識を問われることも多いそうで、スキルアップしたいと参加してくださっています。
当初はどんな方が関心をもってくれるのだろうという不安もありましたが、思いがけない方々が参加してくださって驚きましたし、とてもうれしく思っています。

Q．日本交通とのコラボで「タクシーde建築めぐり」が企画されましたが、今回のコースは、どのような想いで建築物を選ばれたんですか？

今回だけでなく、「建築めぐり」で心がけていることは、建物を知りながら、東京という街、日本という国、もっといえば世界を知ることができるものを選ぶということです。
僕の建築のポリシーでもある「ストーリー」を知るということにも繋がってくるのですが、この土地になぜこの建物が建てられたのかを知るということは、建設が計画された当時の様々な社会背景も知ることができます。
それらの意図を知ることで、その土地、街、国、歴史、つまり物語を知ることができるわけです。

今回のコースとなっている表参道、銀座、丸の内、上野、浅草エリアには、日本の歴史を語ることができる建造物が集まっているんです。
しかもタクシーでの建築めぐりということもあって、3時間のツアーの中で様々なエリアをめぐることが出来ます。
タクシーでの移動はプライベートな空間なので、質問なども遠慮なくしていただきながら、建築物のストーリーをお伝えしたいと思っています。

タクシー盛り上げ隊の、タクシーde建築めぐりのレポート記事はこちら

「タクシーde建築めぐり」ではワゴンタイプのタクシーに乗車し、
三村さんが貴重な建築の知識を伝授してくれる。

「　誰でも楽しめる建築の見方　」

Q．誰でも簡単に建築が楽しめるコツはありますか？

まず、建物の外側を見てみてください。
例えば、その街を象徴するようなビルを見て見ましょう。窓の形が特徴的だったり、壁に不自然な凹凸があったとしましょう。そこには必ず建築家の意図があります。単なるデザイン？機能性？それとも構造の制約？・・・などなど、どのような意図で作られたのか想像するのも面白いのではないでしょうか。
次に建物の中に入ってみましょう。そこが商業施設だったとします。商売上は商品をたくさん並べて置くべきなのに、売り場として利用せず、オープンなスペースとなっていたとしましょう。そこには商品をただ売ればいいということだけではない他の意図、例えばブランドのイメージアップはたまた街や社会への貢献のためといった考えがあって、そのようになっているはずです。
このような想像や思いをめぐらすだけでも、これまでと見方が変わって楽しめるのではないでしょうか。

Q．今後、東京の建築はどのように変わっていくと思いますか？

さまざまな進化により、木造の高層化など材料のもつ特性もかわってきました。
構造的な制限もコンピューターで可能になったことも多くあります。
ですから、いままでの既成概念から一歩超えた建築がたくさん生まれてくるでしょう。
また、商業施設などは、建築自身がアイコンとなってそれらがもつイメージで、ブランド力を発信していくということがますます増えていくことになると思います。

今年50歳を迎えた三村さん。
50代は図書館や博物館などたくさんの公共建築を手がけたいという目標を立てている。

文：ほし友実　写真：鈴木千佳